夜中の誘い(No.160)

金融危機を始め、様々な危機や困難に直面している世界の中で、今年も私たちはイエスの誕生を記念する日に向かって歩み始めました。不安や心配にも必ず穏やかで爽やかな心でその日を迎えたいと思う人、その夢を抱いている人々は少なくないでしょう。厳しい現実の中でこそ、希望を与え、心に安らぎをもたらし、前方の歩みを照らす光となる「言葉」を人は待ち兼ねているのではないでしょうか。私たちはその「言葉」となった神を、幼な子の姿を通して迎えようとしています。
 それを契機にして、鮮やかな色のリボンに飾られ、美しく包装されたクリスマス・プレゼントとして、皆さんにこの「一言」を贈らせていただきたいと思います。
*私事で恐縮ですが、「クリスマス」と聞くといつもと言っていい程、懐かしく思い出す歌があります。静かで清らかなメロディとその歌詞は、実にイエスの誕生に相応しいものだと思います。誰もが知っている歌、クリスマスに季節になると全世界の様々な所で鳴り響く歌、多くの人が口ずさみ、心に残り、感動をもたらし、心の安らぎを与える歌、「きよしこの夜」と言う歌です。
 皆さんもご存知のように、この歌はオーストリアのアルプス山中にある古い村で1818年12月イエスの誕生を祝う夜に生まれました。夜中のミサの前にこの村の司祭ジョゼフ・モアーは貧しい家で生まれた赤ん坊の祝福を求められ、行ってみるとその家の光景がイエスのベツレヘムでの誕生と重なったため、彼は例にない感動を覚えました。帰り道に輝く星空を仰ぎながら彼は森の静寂の中で神の平安と善意の約束を感じました。深夜のミサの後、彼は自分の書斎に入り詩を書き始め夜明けと共に書き終わりました。
 クリスマス当日、モアー神父は書いた詩を持って友人であり学校の先生だったフランツ・グルーバー氏の家を訪れました。友人はその詩を二度も三度も繰り返して読み早速譜面を書き始めました。このように「きよしこの夜」の歌がクリスマスの夜中に生まれました。
今年も心と声を一つにして私たちの共同体は全世界の大勢の人々と共にその歌を祈りとして幼な子に捧げます。どうか皆さん、悩みや不安、孤独や哀愁の最中に沈みがかろうとしても一緒にイエスの誕生を祝うために集い、その歌を唄いながら再び心に希望の光を点して下さい。
*火を灯す。その言葉はもう一つの懐かしい思い出を記憶に蘇らせます。美味しい「BUCHE DE NOEL」(ビュシュ・ド・ノエル)の事です。クリスマスの薪 子供の頃、クリスマスの薪に火を点けることはクリスマスの夜の嬉しいひと時でした。忠実と肥沃のシンボルである果実の木の枝を切り、その薪を飾り暖炉の中に寝かせていました。その上にアルコールを注いでから家の一番小さい子はそれに火を点けていました。その日の暖かさと美しさ、燃える薪から散る火花、火花が多ければ多い程に次の年の収穫が豊富になると言い伝えられ、その光景を忘れる事が出来ません。その時の楽しみは夜中のミサからの帰り母が作ってくれた薪そっくりのチョコレートロールケーキを味わう楽しみと連動していました。火花を見ながら既によだれの出そうな思いでした。
黒崎教会ではチョコレートロールケーキを提供する事が出来ませんがおいでになれば心が温まるひと時を共に過ごす事が出来ると思います。「パウロ年」に合わせて典礼を考え、パウロと共にイエスの誕生を迎え、祝いたいと思います。
どうか皆さん背負っている重荷を幼な子の前に置いて、幼な子が約束された喜びと平和、その「言葉」を信じて、この一年を共に結ぶために教会の方へ足を運んで下さい。共にクリスマスのメッセージに耳を傾けようではありませんか。
「いと高きところには栄光神にあれ 地には平和、御心に適う人にあれ」と。(ルカによる福音2.14)イエスの御降誕おめでとうございます。
2008年11月号
ベリオン・ルイ神父

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