頂いたタレントを活かして(No.101)

 過ぎ去った一年は皆さんにとってどんな一年だったでしょうか。幸、不幸によってその評価は左右されるでしょうが、それを「土台」にして、それを「肥料」にして、新しい年を迎えるようにしてはと勧めたいのです。今年も社会と世界の複雑な状況の中で、私達は、神の国を築き上げるために遣わされています。それに積極的に取り組み、大勢の人と協力をしながら、それに励むように心掛けたいと思います。「み国が来ますように。み心が天に行われる通り、地にも行われますように」と。
 
 それに当って、年の初めに是非思い出していただきたいイエスの言葉があります。それは「タラントン」のたとえ話です。(マタイ25、14~30)それをゆっくりと読み、黙想し、かみしめて味わおうとすれば、この尊い新しい1年を空しくせず、旨く活かすようにと決心をたてることが出来ると思います。
 
 芸能界の「タレント」という言葉を皆さんもよくご存知のことですが、その言葉は昔のギリシアの貨幣、莫大な金額となる「タラントン」という言葉に由来しています。イエスのたとえ話以来、「タラントン」という言葉は神から与えられ、人が持っている可能性、才能、能力などを言い表すためによく使用されるようになりました。私達は数え切れない程の「タレント」をいただいています。生命、健康、衣食住、家庭、教育、環境、そしてイエスの福音を中心にした信仰です。神の国のしるしである教会に入り、人類と、同じ信仰を分かち合っている兄弟と共に、私達はこの地上で神の国を作りながら、その国の完成に向かって歩み続けています。その道において、いただいた「タレント」を活かして生きるように呼びかけられています。
 
 色々な面で恵まれている私達は、いただいた「タレント」を活かさず、愚痴を言うとすれば欲張りの甘えん坊のように振舞っているのかもしれません。そう言いながら、病気を患い、苦痛に堪え、死に直面している方々、不幸のどん底にある方のことを軽く見做そうとしているのではないことは、言うまでもありません。このような状態に置かれている方々も、「タレント」を活かすことが出来ると確信しているからです。その方々は、信仰のうちに希望を捨てず、十字架の上でのイエスと密接に結ばれ、復活への期待を証しすることが出来ます。この証しこそは、いただいた「タレント」を活かしているしるしです。
どの状態に置かれていても、大切なことはいただいた「タレント」を活かすことです。

-タラントンをもらった人は、怠けて何もしなかったのに、悪を犯さなかったことを自慢しました。しかし、悪を犯さないことは当たり前のことであって、そのために勲章を期待することはおかしな話です。
 
 今年も心を込めて、この世を-すなわち私達が住んでいる狭い場所をもっと美しく、もっと住みやすい、もっと愛、親切、思いやり、正義と平和、「微笑」のある所にするために励み続けましょう。

 私は好んで微笑を自動車のワイパーにたとえています。ワイパーは雨が降ることをやめさせることが出来ませんが、ワイパーのおかげで自動車は走り続けることが出来ます。神からいただいた「タレント」を活かせば、世の中は少しづつ神の国の姿に変わるのではと、私はその夢を抱き続けたい。

皆さん、新年明けましておめでとうございます。
2004年1月
ベリオン・ルイ神父

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